第4章

莉央視点

厚手のカーテンの隙間から朝日が差し込む。私はベッドの端に腰掛け、鏡の中の自分をじっと見つめていた。三度目の朝。すべてが変わってから、三日が経った。

この三日間、ママは私を起こしに来て、額に優しくキスをしながら「おはよう、莉央」と囁いてくれた。この三日間、私は台所で残り物を待つのではなく、家族の食卓で食事をした。この三日間、誰も私のことを、まるで存在してはいけないものかのように見ることはなかった。

でも、この変化は……いつまで続くのだろう?

私の手は震え始める。喉の奥から這い上がってくる恐怖を抑えようと、唇を噛みしめた。前の人生の断片が、砕けたガラスの破片のように頭の中をよぎる。

前の人生でも、希望を抱いたことはあった。助け出された最初の数時間、おとぎ話がついに始まるんだと思った。でも現実は厳しく、いつだって望まれていないのだと突きつけてきた。

もしママの病状が再発したら? もしまた私を見て震えだしたら? 私はもう、幸せを知ってしまった。もしまたそれを失ったら、私はきっと正気を失ってしまう。

私は自分の体を抱きしめ、深呼吸をした。立ち上がって窓辺まで歩き、眼下に広がる庭園を見下ろす。すべてが完璧に見える。完璧すぎて。出来すぎている。信じられないくらいに。

何かをしなければ。すべてが崩壊する前に、自分を守らなければ。

午前十時になる頃には、私は山崎叔父さんの書斎の前に立っていた。心臓が激しく脈打っている。重厚な木製のドアを、そっとノックした。

「叔父さん? お話があるんですけど……」

山崎叔父さんは銀行の書類の山から顔を上げた。その表情は、数日前に比べてずっと温かい。

「もちろんいいとも、莉央。どうしたんだい?」

私は指をきつく絡ませる。

「学校に行きたいんです」

山崎叔父さんはペンを置き、私に全ての注意を向けてくれた。

「学校かい? それは素晴らしい。この辺りで一番良い私立学校に入れようと計画していたところだよ」

「いえ、そうじゃなくて……」私の声は小さくなる。「寄宿制の学校がいいんです。どこか、遠くの」

山崎叔父さんは眉をひそめた。

「どうして寄宿学校なんだ? 薔子はようやく君を見つけたんだぞ。そばにいてほしいと思っているはずだ」

言葉が喉に詰まる。

「ママの回復の邪魔をしたくないんです。私が遠くにいれば、その方が、みんなにとって良いのかもしれないから」

山崎叔父さんは長い間黙って、私の顔をじっと見ていた。

「莉央、君は自分のことをお荷物だと思っているのかい?」

目の奥が熱くなる。

「ただ、私のせいで誰にも不幸になってほしくないだけなんです」

山崎叔父さんは立ち上がると、机を回り込んできた。その表情は、困惑からどこか理解を示すものへと変わっていた。

「少し考えさせてくれ。何か妥協案が見つかるかもしれない。だが莉央、これだけは分かっておいてほしい。君はお荷物なんかじゃない」

私が返事をする前に、ドアが勢いよく開いて直人が入ってきた。練習から帰ってきたばかりの、テニスウェア姿のままだ。

「妥協案だって?」彼はタオルを掴んで顔の汗を拭いながら尋ねた。

「莉央が寄宿学校に行きたいそうだ」と山崎叔父さんが説明する。

直人はぴたりと動きを止めた。

「寄宿学校? なんでだよ。この家が狭いとでも言うのか?」

顔が熱くなる。

「ただ、自立しなくちゃって思っただけ……」

直人が一歩近づいてくる。その声は、私がここに来てから聞いた中で一番優しかった。

「自立はいいことだけど、母さんはあんたを見つけたばっかりなんだぞ。今あんたがいなくなったら、母さんがどう思うか考えたのか?」

二人には分かっていない。前の人生だったら、誰かがママの気持ちを心配してくれるのを聞くためなら、何でもしただろう。でも今、それを聞いているのに、私が感じるのはさらなる恐怖だけだった。

「どうしても学校に行きたいのなら、近くで手配できる」と山崎叔父さんが提案する。「車で二十分の距離で、質も素晴らしい」

山崎直人は腕を組んだ。

「でも、なんでそんなに寄宿舎にこだわるんだ?」

私はそれを止める間もなく、真実が口から滑り落ちていた。

「いつか突然、追い出されたくないだけなの。先に自分から出ていけば、少なくとも覚悟はできるから」

部屋が静まり返る。山崎叔父さんと山崎直人が交わす視線に、私の胃はきゅっと縮んだ。言い過ぎたと気づき、はっと手で口を覆う。

山崎直人の声は、どこか奇妙に聞こえた。

「母さん、この数日あんたに優しくしてただろ。追い出したりするもんか」

「そうじゃないかもしれないけど、でも、もしそうなったら?」

その時、廊下からそっと近づいてくる足音が聞こえた。ドアがさらに大きく開き、私たちは三人ともそちらを向いた。

ママがそこに立っていた。顔は紙のように真っ白で、頬には涙の跡が伝っていた。

「あなたたち、何を話しているの?」声が震えている。

山崎叔父さんが飛び上がるように立ち上がった。

「薔子、我々はただ……」

「ここを出ていきたいの?」ママの目が、私に釘付けになる。「寄宿学校に行きたいって?」

私はパニックになって言葉をまくしたてた。

「ママ、そんなつもりじゃ……ただ、私は……」

「ただ、何?」声が甲高くなる。「私がまたあなたを捨てると思ったの? 私の優しさが、ただの一時的なものだと思ったの?」

ママの体は震え始めた。でも今度は、恐怖からではない。怒りと、そして深い悲しみからだった。

「先に自分から去れば、もう傷つかなくて済むと思ったの?」

私は言葉を発することができない。涙がこぼれ落ちる中、ただ頷いた。

「莉央」ママはそう囁きながら、私の方へ歩いてくる。「あなたは自分が厄介者だと思っているの? 私があなたから『回復』する必要がある、何かだと思っているの?」

その瞬間、ママは崩れ落ちた。駆け寄ってくると、息ができないほど強く私を抱きしめる。今では、二人とも震えていた。

「あなたはいつも、他の人を幸せにするために自分を犠牲にしようとする」ママは涙声で言った。「でも、あなたなしで、私がどうして幸せになれるっていうの?」

その言葉は、まるで雷のように私を打ちのめした。

「ママ……」

「私があなたの考えていることを知らないとでも? あなたが自分のことを、私の痛みの源だと信じていることを知らないとでも? あなたが消えれば、私が良くなると思っているんでしょう? そうなんでしょう?」

私はしゃくりあげながら頷いた。

「間違っているわ、莉央。完全に間違っている」ママは私をさらに強く抱きしめた。「あの地獄のような場所で、あなたがいたから私は生きていられたのよ。この世界にはまだ美しいものがあるんだって、信じさせてくれた。あなたが私を救ったの。壊したんじゃない」

私の世界が、音を立てて崩れていく。十五年間、私は自分がママにとって歩く悪夢であり、彼女を閉じ込めておく存在なのだと思っていた。なのにママは、私が彼女を救ったと言うの?

「でも、いつかママが……って、怖くて」

「絶対にないわ」ママは優しく私の顔を撫でた。「絶対に、絶対にない」

一時間後、私たちは皆、メインのリビングルームに座っていた。ママはまだ私の手を離そうとしない。

山崎叔父さんが、慎重に咳払いをした。

「教育については、きちんとした計画が必要だな」

「莉央はどこにも寄宿させません」ママはきっぱりと言い放った。「どこにも行かせないわ」

山崎直人が口を開く。

「でも、学校は必要だろ。あいつは頭がいい。最高の機会を与えてやるべきだ」

私は、小さくとも、しっかりとした声で言った。

「学校には行きたい。ただ、寄宿舎は嫌なの」

ママが握る私の手の力が、わずかに緩んだ。

「それなら、近所で一番良い学校を探しましょう。私が毎日車で送っていくわ。お迎えも、私自身が行く」

「車で二十分のところにあるあの学園はどうだ?」ロバート叔父さんが提案する。「東都でも指折りの進学校の一つだ」

山崎直人が頷く。

「俺も手伝える。卒業まであと一年あるし。あいつのこと、見ててやれるよ」

家族が私の将来について真剣に話し合い、私の必要とすることを軸に計画を立ててくれているのを聞きながら、私は今まで一度も経験したことのない感情を覚えていた。本当の、居場所。

その夜、ママは私のベッドに腰掛け、明日の学校の面接に着ていく服を選ぶのを手伝ってくれた。彼女は青いワンピースを私の体に当ててみる。

「この青は、あなたの瞳を完璧に引き立てるわ」

「ママ、もし私が家族に恥をかかせたらどうしよう? マナーとか、そういうの、全然知らなくて……」

ママは柔らかく笑った。

「マナーは学べるものよ。でも、優しい心は誰もが持っているわけじゃない。あなたには、一番尊いものが備わっているわ」

「尊いものって?」

「優しさ。勇気。そして、いつも誰かのことを一番に考える心よ」

前の人生では、こんな夜は決してなかった。明日の服装を気にかけてくれる人、私が緊張していないか心配してくれる人、ただ私を安心させるためだけに夜更かししてくれる人なんて。

ママは身を乗り出すと、私の額にキスをした。

「もうおやすみ、莉央」

「ママ、私を行かせないでいてくれて、ありがとう」

「馬鹿の子ね。あなたを行かせるなんて、どうして耐えられるっていうの? あなたは、私の最も大切な宝物なんだから」

彼女がドアを閉めて出て行った後、私は柔らかいベッドの中で体を丸めた。カーテンの隙間から差し込む月明かりが、私の微笑む顔を照らしていた。

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